2018年1月17日水曜日

第55回記念定期演奏会 終演報告

少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。私たちアポロンは、昨年の12月24日に第55回記念定期演奏会を開催しました。
本定期演奏会の終演をもって、66期生はアポロンを卒団しました。卒団した団員を代表して、運営系四役からご挨拶申し上げます。


2017年度神戸大学混声合唱団アポロンの部長を務めておりました、66期ベースの本田卓也と申します。
 私たち神戸大学混声合唱団アポロンは去る1224日に神戸文化ホール大ホールにて第55回記念定期演奏会を開催いたしました。OBOGの皆様を含め当日は多数のお客様にご来場下さり大変光栄に思います。
 私たちはこの定期演奏会の成功を1年間の目標としてこれまで活動を行って参りました。これまで培い養ってきたものを、この演奏会で存分に発揮し1年間の集大成に相応しい最高の演奏を披露できたこと大変うれしく思います。またこの演奏会が開催できましたのも、顧問の大田美佐子先生、名誉顧問の斉田好男先生をはじめ様々なご指導いただきました諸先生方、OBOGの皆様、アポロンがお世話になりました全ての皆様の温かいご支援の賜物であります。団員を代表して感謝申し上げます。
2017年度、アポロンでは様々な演奏を披露してまいりました。4人のソリストやエレクトーン、ピアノを加えた壮大な演奏を行った定期演奏会はもとより、他5団体の人達と共に1つのステージを作りあげたKKR定演や、これまでアポロンで演奏することは無かったシアターピースを扱ったジョイントコンサート、そして地域公民館での訪問演奏などこれらの経験は我々にとってかけがえのない宝となり、これからも心に根差していくことでしょう。
 最後になりますが、本年度アポロンの活動を応援してくださった皆様に心より御礼申し上げます。2018年度、神戸大学混声合唱団アポロンは新たに70期生となる団員を加えさらなる飛躍を遂げ、より素晴らしい演奏を皆様にお届けしてくれることだろうと確信しております。今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
神戸大学混声合唱団アポロン
66代部長
本田卓也



2017年度の正指揮者を務めました重岡昂です。
55回記念定期演奏会にお越し頂いたみなさま、誠にありがとうございました。今年は"記念"にふさわしいボリュームのある演奏会とするべく企画して参りましたが、諸先生方のお力添えなしでは成功し得ませんでした。名誉顧問の斉田先生には第四ステージの客演指揮をして頂き、的確で熱のこもった指導で我々を引っ張ってくださりました。顧問の大田先生には、練習場所の確保等、我々が困難に面した時には様々な形で応援して頂きました。そして客演して頂きました内藤先生、大島先生、亀井先生、またソリストとして出演頂きましたボイストレーナーの植田先生、山田先生、井澤先生、武久先生に対しても、感謝の念に堪えません。誠にありがとうございました。
また、これほど豪華なステージ・演奏会は、OBOGのみなさまのご支援あってのものでした。みなさまの暖かい応援に心より感謝申し上げます。これからもご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
年度は変わって新体制となりましたが、既に練習や依頼演奏を行うなど、後輩達は歩みを進めております。一緒に演奏会を作ってくれた頼もしい彼らなら、きっとこの先も力強く活動してくれるだろうと確信しています。
改めて、みなさま本当にありがとうございました。

神戸大学混声合唱団アポロン
66期正指揮者
重岡昂



いつもお世話になっております。2017年度チーフマネージャーを務めておりました、高橋悠介です。
 先日の第55回記念定期演奏会にはOBOGの方々をはじめ、たくさんのお客様に足をお運びいただきました。この場で改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 この度の定期演奏会は、55回という節目の年を迎えるということで、「記念」定演にしたいという考えがまず生まれ、そこから「記念」という言葉にふさわしい演奏会にするためにはどうすればよいのかを考えなくてはなりませんでした。私たち運営系は入念な話し合いを重ね、いろんな案を出し合ってその「記念感」を模索する日々を続けました。そんな中、アポロンの名誉顧問である斉田好男先生のお力添えで、客演指揮に斉田先生を、客演ピアノに内藤典子先生と客演エレクトーンに亀井杏菜先生、そして客演ソリストにアポロンのボイストレーナーの先生方をお迎えして、ブルックナーの名曲「Te Deum」を第4ステージにて演奏することが決定しました。4名のソリストを迎えるステージを私はアポロンの定期演奏会で経験したことがなく、しかもそれがすべてアポロンのボイストレーナーの先生方であることに衝撃を受けました。それと同時に、このステージならば「記念」という言葉を象徴してくれるものになるだろうという期待感を持ちました。本当に斉田先生のお力添えなしでは成し得なかったステージですので、斉田先生には感謝してもしきれません。
 また、今回の定演は第51回定演ぶりに、チケットを有料にいたしました。これは、「団員が一年間必死に自分たちの時間を注いで練習した曲の演奏会には、価値があって然るべきだ」という考えの下、運営系で決定したことです。ホールの料金が上がったり、情報宣伝の際に気軽にチケットを配ることができなくなったりと、入場料を取る弊害はいくつかあったのですが、それでも、「お金を払ってきていただくのだから、そのお客様を失望させないように精一杯練習しよう」という団員の練習へのモチベーション向上につながったり、お金を払ってチケットを買ってくださった方は実際に演奏会に足を運んでくださりやすくなったりして、多くのメリットもありました。そして、当日たくさんのお客様に有料ながらもチケットを購入していただきました。お金を払ってでも演奏を聴きたいと思っていただけることが実感でき、じんわりとした感謝の気持ちが生まれました。
 他にも、ホームページ上でチケットを購入できるシステム(ウェブチケット)を今回採用しました。これは、7月初めにアポロン・京都大学音楽研究会ハイマート合唱団・淀川混声合唱団の3団で行ったジョイントコンサートにて採用されたシステムを、定期演奏会でも取り入れたものです。実際に、10数名の方がこのシステムを通してチケットを購入してくださりました。本当にありがとうございます。
 以上の試みを実行に移すまでに、多くの時間と労力をかけて協議しましたが、一筋縄ではいかないことも多々あり、艱難辛苦いたしました。しかし、有能な同級生や後輩が主体的に動いてくれたおかげで、提案を実現させることができました。彼らには尊敬と感謝の意を表したいです。
 チーフマネージャーは名目上定期演奏会実行委員の長であるらしいのですが、後輩の皆は指示を与えられて動くのではなく、自ら思考し、自ら他の役職に働きかけ、仕事を遂行していたように思えたため、私はただ彼らを見守る立ち位置にいさせてもらっていました。特に、定演役職チーフの皆は非常に頼もしかったです。66期生が卒団したあと、彼らがアポロンの歯車となり有機的にアポロンを動かしていってくれるだろうと期待しています。
 最後に、このブログをご覧になっている皆さまにおかれましては、引き続きアポロンの活動へのご支援、ご声援をよろしくお願い申し上げます。
 
  神戸大学混声合唱団アポロン
 66期チーフマネージャー 高橋悠介



2017年度神戸大学混声合唱団アポロンの副部長を務めさせていただきました、鵜崎真妃と申します。第55回記念定期演奏会には多くのお客様にお越しいただき、誠にありがとうございました。
運営系として日々活動に取り組む中で、アポロンのあるべき姿はどのようなものなのだろうかをことあるごとに考えてきました。私たちはアポロンの団員である前に大学生であり、学業を最優先にすべき立場です。各人が様々な事情を抱えながら、その中で週3回の本練習に参加するだけではなく、70人もの団員を抱える大きな団体の運営にあたって必要な仕事を分担してこなし、空きコマに部室で個人練習をこなすことは決して楽なことではありません。対外的には、アポロンは関西でも有数の規模を誇る大学合唱団であり、合唱界においてそれ相応の存在感と責任をもつ団でもあります。そんなアポロンが目指すべきはどのような団なのか、自分の中ではなかなか答えがみつかりませんでした。今まで伝統として引き継がれてきたことをそのまま運用するのではなく、日々変化するアポロンを取り巻く環境に適応しながら進んでいくことは決して簡単なことではなく、上手くいかないことの方が多かったように思います。それでも、自分にとって目指すべきアポロンの姿を考え、見据え、それに向けて一運営系としてまた一歌い手として取り組んできた一年間は、私にとってかけがえのないものとなりました。
アポロンでは、毎年12月の定期演奏会を一年間の集大成として位置付けています。歌についてはもちろんのこと、練習の計画、演奏会の運営、日々の団の運営、各個人の勉強や私生活とアポロンの両立など、全団員のアポロン生活の集大成です。17年度アポロンの一年間の「集大成」を、お越しくださったすべての皆様に感じていただけたなら、それ以上の幸せはありません。
定期演奏会を終えて、18年度アポロンが活動を始めています。後輩たちがこれまでの伝統を引き継ぎながら、昨年度までとはまた違う新しいアポロンを創っていってくれることでしょう。どうぞこれからも、神戸大学混声合唱団アポロンをよろしくお願いいたします。

神戸大学混声合唱団アポロン
66代副部長/66期ソプラノ
鵜崎真妃

2017年12月23日土曜日

今年一年を振り返って〜部長より〜

昨年12月18日に新体制に移行してから実に1年の月日が流れ、その間に様々なことがありました新入生の加入、関混連定演に合唱祭、そしてシアターピースを行ったジョイントコンサート、3回の合宿など思い返せばきりがありません。
合唱とは関係のない話をします。
私は夏合宿で訪れた大山にて満天の星を見ました。その星の輝きに感動を覚え、今でもその光景は目に焼き付いています。大山の夜は普段聞こえる車の音や人の声などは殆ど聞こえず、代わりに聞こえるのは地面を踏みしめる自分の足音と時折吹く風の音などで、目を閉じればそのまま自然に没入し自らもその中に溶け込むような、そのような心地がしました。
似た経験を私は春合宿でも経験していました。春合宿で淡路島を訪れていたのですが、そこでも星を見に外に出ていました。宿舎が海に面していたため、その際には風の音、波の音、鳥の鳴き声などから地球の鼓動と生を営む生物の魂を感じる、そんな気がしていました。
何の話をしているのかと思われるかもしれません。私は視覚的な話と聴覚的な話しかしていません。感覚を鋭敏なものにしていたとはいえ、私はこのように五感のうちこの二つだけで壮大な経験をした、ということが言いたかったのです。我々が演奏する合唱を聴くにこの二つの感覚が重要なのではないかと思っています。聴覚は言わずもがな、視覚も合唱では重要なのです。どんな表情で歌っているのかは勿論のこと、目線はどこを向いているか、体はどこを向いているか、方向が統一されている方が視覚的にも美しい。姿勢が良い方が見映えが良い…。
論理の飛躍と申しますか、どうしてこんな話をしたのでしょう…
(気を取り直して)
アポロンは今年度66期生から69期生が所属し活動に励んで参りました。今年の特徴として、合唱に励む一方でアポロン以外での活動や私生活の趣味にも精力的に取り組むなど非常に幅広い視野様々な考えを持つ多様性に満ちたメンバーが集まっていると個人的には思っております。
12月24日に開催します第55回記念定期演奏会は我々の1年の活動の集大成と言えます。このメンバーで活動するのも定期演奏会が最後となります。この非常に個性豊かなメンバーだからこそ今年のステージは成立していると言っても過言ではありません。当日皆様のお越しをお待ちしております。
(了)

アポロンと祝うクリスマスはどんな……?

今日は二本立てです。1ステ、3ステ、4ステとこれまで解説してきましたが、残る2ステについて簡単な紹介を、アルトのパートリーダーさんに書いてもらいました!2サプライズ要素も込めて、ちょっと出し惜しみです。どんなステージなのか、明日を楽しみに!


今回は第2ステージでお送りする曲から特にクリスマスをお祝いする2曲についてご紹介したいと思います。
 一曲目「O magnum mysterium」は直訳すると「おお、大いなる神秘」となり、処女マリアからイエスキリストが生まれたという奇跡の後継を描いています。そのためクリスマスの深夜に捧げられる典礼の曲が原曲となっています。これまでに数多くの作曲家がこのテキストに曲をつけていて、いずれも静かで美しい曲調で、深夜に歌われる情景が浮かんできます。今回はスペインの作曲家であるハビエル・ブストー作曲のバージョンでお送りします。この曲の聞きどころは何と言っても冒頭です。各人が自由に「O magnum mysterium」と歌う声が重なり、徐々に和音を変えながら消えていく様はまさに「神秘的」です。本番では光の演出も加わりますので、ぜひ耳だけではなく目でも神秘を感じていただければ幸いです。

 二曲目「gaudete」は直訳すると「歓べ」となり、こちらも一曲目と同じくキリストの誕生を賛美する歌詞になっています。しかし曲調は一曲目の幻想的から雰囲気くら変わって力強い曲調で演奏されます。この曲も多くの人に編曲がされており、今回はKing's singersのメンバーであるBrian kay の編曲でお送りします。King's singersは男声4人のカルテットということもあり、男声がとてもカッコイイ編曲になっています。特に前半と後半で登場する男声ソロにご注目です!


この記事で一連続いて来た、定演のステージ紹介はお終いです。
それでは明日ホールでお会いしましょう!
(了)

ロマンチストの彼とつれない彼女(後編)

 前編の続きです. 続きを書くのを渋っていたら二か月も空いてしまいました, どんな話だったか覚えていますでしょうか.
 さて, 冬の到来は, こうしたイメージの反転をもたらすだけでなく, ロマンチックな初夏の終わりが逃れようのないものであることをも告げます. 彼が挙げる喜びは一時的な, 儚いものに過ぎないと突き付けるのです.
 Raleighの詩の9行目以下を見てみましょう. 「花はしぼみ、豊かな野原は厳しい冬の前に実りの終わりを告げる.」そして, 13行目以下には美しい贈り物の数々は一緒くたに扱われ (たった二行に押し込められています. 悲しい.) , みな壊れたり枯れたりしてはやがて忘れされてしまうのだと返すのです. この歌詞部をメロディに歌う女声パートの下で掛け合いをする男声パートの旋律は, あまりに無下な仕打ちを嘆くかのようです.
 細々とした解説はここまでにして, 悲しい掛け合いも終わりへ向かうことにしましょう. 21行目から最後までの詩は女声の叶わぬ夢を終わるような, どこか切ないようなメロディーで歌われます. 「もし若さは続くもので, 愛はしぼむことなく, 楽しいことは終わることなくいつも満ち足りているのだとしたら......」(21-22行目) 「あなたの恋人になりましょう.」
 これまでの返しを見てきて, この最後はとても皮肉に映りますね. 永遠なものなんてないのに, どうして恋人になってくれると言うのでしょう? でも明日定演で聴くときには, そのメロディーも相まって切実な思いに聴こえるかもしれません. 実際, そうとも読める返しだと思いませんか?(とても屈折したものではありますが)
    本当のところは全く知りませんが, 自分には作曲者であるJohn Rutterはこの詩を意図してそう解釈し直したように思えるのです. なんだか少しずるい曲解かもしれませんね. でもそんな結末だからこそ, この"Come live with me"は面白い曲だと思います.
 ところで, 明日の本番ではわれらがアポロン男声陣が女声パートと, この掛け合いをします. そう考えると明日が楽しみになってきたりするのではないでしょうか.
 と思うのですが僕だけでしょうか?
(了)

2017年12月15日金曜日

ブルックナーの描く神性(後編)

お待たせしました!前編の続きです。


Te gloriosus Apostolorum chorus,
 Te Prophetarum laudabilis numerus,
 Te Martyrum candidatus Laudat exercitus.
 誉に輝く使徒のむれも御身を、
褒めたとうべき預言者の集まりも御身を、
潔き殉教者の一軍皆もろともに御身をたたえ

再び主題旋律のユニゾンへ。神キリストを賛美するものとして、新たに「使徒」「預言者」「殉教者」が加えて明示され、神への賛美の普遍性が一層強まる。賛美する主体としてのこれらの存在を力強いユニゾンで歌い上げる。執拗にTe(あなた)の語で始まって神を讃える存在を述べてゆく。それぞれの‘Te’は違う拍で入っていき、歌い手には正確にブレスを合わせる必要性。Te Martyrum…では主題ゼグエンツがD-mollに上向し、感情の高ぶりを表す。主題ユニゾン多角性をもって歌い上げることにより、キリストへの思いが一層強めて謳われます。

 Te per orbem terrarum sancta confitetur Ecclesia,
 Patrem immensae majestatis;
 Venerandum tuum verum et unicum Fillium;
 Sanctum quoque Paraclitum Spiritum.
 全地にあまねき聖会は共に賛美し奉る
 御身限りなき御いつの御父を、
 いとたかき御身がまことの御独り子と、
 また慰め主なる聖霊と。

 Te…Ecclesiaでは主題のゼグエンツのユニゾンがさらにEs-durに上向し、神への強い賛美をfffの大音量で歓呼します。‘confitetetur’の語で和音に展開し、EcclesiaでF-mollのIの和音で終結。一転、Patrem…から再びユニゾンに戻るとともに、ダイナミクスがPに。G-mollの厳粛な雰囲気の中で、「御父」「その御父の御独り子=イエス・キリスト」「主なる精霊」を讃えます。すなわち、キリスト教の神の定義・三位一体です。これまでf系でひたすら力強く神を賛美していたのに対比して、p系のユニゾンにより、キリスト教で最も根本的な教義たる三位一体を静かに印象付け、厳かに神への賛美を表現しているのです。(4thステージ技術系である私個人的に、このコントラストがキリスト教義の神秘性が感じられて最も大好きです。)

 Tu rex gloriae, Chiriste.
 Tu Patris sempiternus es Filius.
 御身、栄えの大君なるキリストよ、
 御身こそは聖父のとこしえ聖子。

 この部分は第1曲Te deum laudamusの大きな佳境でしょう。ここから神の呼称が‘Te’から‘Tu’に変わっています。これまで述べてきたひたすら賛美する強い思い、賛美する様々な存在、三位一体の教義などを踏まえ、さらに神を賛美したいという気持ちが高揚し、親近性の高まった呼称となっています。そしてここではじめて直接的にChriste=キリストの名前が呼ばれるのです。神を賛美することとは、すなわちキリストを賛美することである、と。fffのダイナミクスでChri(G♭)→-ste(D♭)のコードで歓呼。

 Tu ad liberandum suscepturus hominem, non horruisti virginis uterum.
 Tu devicto mortis aculeo,aperuisti credentibus regna caelorum.
 世を救うために人とならんとて、おとめの胎をいとわせ給わず、
 死のとげに打ち勝ち、信ずる者のために天国を開き給えり。

 Tu ad liberandum…で受胎告知を重々しい合唱のアカペラで描き出します。さらに、Tu devicto…はキリストの受難です。Tu(あなた) devicto(とげ)をベース先行で、それを追いかけるようにしてテナーがTu devicto aculeoの歌詞を繰り返し歌い、さらに女声がテナーのメロディーに追随してTu devicto mortis aculeoを歌います。ベースの執拗に繰り返されるLowG音や、テナーの跳躍によりキリスト受難の苦痛を重々しく描き出しています。そしてaperuisti…の部分。ひたすらに賛美されたキリスト、受難という死のとげに打ち勝ったキリストは天国を開くことができたと述べています。‘sehr ruhig’=「とても静かに」の指示の下、まずppのアカペラでソプラノ先行→他3パートという掛け合いでこの歌詞を歌うことで静寂の中でのキリストへの祈祷を表しています。そして次はオケ伴奏も加わり、FlとObが奏でる半音階に乗せて、ベース→アルト→ソプラノ+テナーの順で変則的なフーガ形式で同じaperuisti…の歌詞を歌います。

 Tu ad dexteram Dei sedes, in Gloria Patris.
 Judex crederis esse venturus.
 御身こそは、天主の右に坐し、御父の御栄のうちに。
 裁き主として来りますと信ぜられ給う。

 前の変則的なフーガ部分はregna caelorumでtuttiとなりcrescendo。そして再現部となり、fffの大音量のダイナミクスの中で強烈な主題のユニゾンを歌い上げ、キリストを荘厳に賛美し、第1曲が終結します。

 以上がTe Deum第1曲の概観となります。ブルックナーが描き出す徹底されたキリスト賛美の世界観が少しでも垣間見えたでしょうか。ちなみに第2~5曲を簡単にハイライトすると、第2曲 Te ergo は、キリストに思いをはせ犠牲となった殉教者を救ってくださいという祈りを、テノールソロを中心とするソリスト四重唱により静かに歌うアリア。第3曲 Aeterna fac は、神よ、あなたを信じ犠牲となった人々を数えてくださいという懇願をffのダイナミクスの中、D-mollのテンションコードで執拗に叫び続ける、半ば狂気ともいえるキリスト信仰。第4曲 Salvum fac は、第2曲を踏襲し、ソリストに合唱が加わる祈り。そして終曲 In te Domine speravi では、「In te, Domine, speravi(主よ、われ御身に依り頼みたり)」「non confundar in aeternum(わが望みは永久に空しからまじ)」という内容を、華やかなソリスト四重唱→合唱tutti→合唱フーガ→ソリスト四重唱→合唱tuttiという形式で歌い継いでいきます。クライマックスでは1stテナーのhiGisと2ndテナーのhiAisの全音のぶつかり、ソプラノのhiCのロングトーンなど、声楽的に尋常ではない高音域で展開されています。
 ロマン派宗教音楽の最高傑作Te Deumの中でブルックナーが描き出す神性を、クリスマス・イヴという特別な日に、音楽の神アポロンの名がつく我々の合唱とソリストの方々で歌い上げる時間は、かけがえのないものとなるでしょう。12月24日、アポロン定演にて、こうご期待。
(了)
(混声合唱団アポロン 68期テナー4thステージ技術系・孫指揮者 佐々木純哉)


-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!
また、定演の告知動画も出来ました。ぜひご覧ください!


-過去の演奏が聴けるようになりました-
第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
の演奏がYouTube上で聴けるようになりました!ぜひどうそ!

2017年11月26日日曜日

ブルックナーの描く神性(前編)


 企画記事第3弾です。今度の定期演奏会では第4ステージにブルックナーの代表的な作品である "Te Deum" を演奏します。なかなか難儀ですが、それだけに非常に魅力ある作品だと思っています。
 そんな "Te Deum" ですが、解説記事を孫指揮者(来年度の副指揮者)である佐々木君をお願いしたところ、彼の才覚と情熱溢れるような原稿が返って来、実際に紙面を溢れてしまいました。というわけで今回も分割記事でお届けします!


 アントン・ブルックナー(1824-1896)はオーストリアの作曲家です。10歳頃からオルガン奏者として活躍。30歳頃からワーグナーに傾倒し、本格的に音楽理論の研究を始めます。40歳を過ぎてからウィーン国立音楽院の教授に就任、交響曲の作曲をはじめます。『交響曲第7番』で成功を収め、数々の交響曲を残しつつも、『交響曲第9番』が未完のうちにこの世を去りました。
 ブルックナーは非常に敬虔なキリスト教徒でした。質素な服装、マナー、敬虔なカトリック信仰ゆえに、当時ユダヤ人資本家が推し進める資本主義化・それに伴う社会の変化に危機感をもつドイツ人にとって、古き良き自由主義的改革以前のオーストリア時代を象徴する人間として尊ばれるノスタルジックな存在だったといいます。数々の宗教曲も残しましたが、そのなかでも、今回アポロンが定期演奏会で取り上げる“Te Deum”は、ロマン派音楽における宗教曲の最高峰と言われています。(余談ですが、“Te Deum”が作曲されたのは先に挙げた『交響曲第7番』完成直後で、楽曲の構造、和声感が非常によく似ています。特に、Te Deumの終曲のフーガ部分は、交響曲第7番の第二楽章Adagioと瓜二つなので、気になる方は音源を探ってみてください。)
 Te Deumはキリスト教カトリックのおける聖歌で、テクスト冒頭“Te Deum laudamus”(神であるあなたを我らはあがめます)から、この名称で呼ばれます。その内容は一貫して「キリストへの賛美」です。当時キリスト教を懐疑的にとらえる風潮が広まり、オペラなど世俗的な音楽が熱狂される中で、キリスト教の教義を真正面からとらえた音楽を生み出したことに、ブルックナーの敬虔な精神がうかがえます。
 ブルックナー作曲“Te Deum”は第1曲「Te Deum laudamus」、第2曲「Te ergo」、第3曲「Aeterna fac」、第4曲「Salvum fac」、終曲「In te, Domine speravi」の全5曲からなりますが、今回はTe Deum第1曲「Te Deum laudamus」に焦点を当ててテクストはどのようなものか、そしてブルックナーはそれをどのような形で音楽にしたのかを紹介します。

 Te Deum laudamus: te Dominum confitemur.
 Te aeternum Patrem, omnis terra veneratur.
 神である御身をわれらはたたえ、主なる御身をわれらは讃美します。
 永遠の御父なる御身を全地は拝みます。

 第1曲冒頭のこの歌詞は、合唱の力強いユニゾンで神を讃美する精神が歌われています。このような印象的なユニゾンを通した高い精神性は全曲を通して多用されています。また、各小節第1拍に山型アクセント「^」を、それ以外の音符には通常のアクセント「>」が付けられています。オーケストラ伴奏でパイプオルガンや金管楽器の大音響の中で、神への讃美の歌声が埋もれないように、といった意図でもあるのでしょうか。

 Tibi omnes Angeli, tibi coeli et universae potestates,
 Tibi Cherubim et Seraphim, incessabili voce prochamant:
 すべての天使も、御身に向かい、天とすべての権力がある者も、
 ケルビムも、セラフィムも、御身に向かい、絶え間なく声高らかにうたいます。

 この部分ソプラノ、アルト、テノールのソロ三重唱で歌われます。前の合唱部分でキリストへの讃美を受け、「神を讃美するのは、我らだけではなく、すべての天使、天、この世の権力者など、この世のありとあらゆるものである」ということを述べています。この部分はソリスト同士の掛合い。G-durのコードに始まりますが、ソリストの掛合いの度に相次ぐ転調。キリストへの讃美は、ありとあらゆるものからのものであるということを象徴するかのように。

 Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus Deus Sabaoth.
 Pleni sunt coeli et terra majestatis gloriae tuae.
 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の神なる主。
 天も地も、満ちている 御身の栄光ある御いつに、と。

 ソリスト三重唱から、ふたたび合唱へ。F-mollの静かで不穏な雰囲気。Sanctus(聖なるかな)という言葉は、1回目はピアニッシモで、2回目はピアノで、そして三回目ではC-durの華々しいフォルティッシモで歌われます。Sanctusは神を讃美する象徴的な言葉ですが、その同一の言葉のppからffへの移り変わりは、内なる讃美と、外に発散させるような爆発的な歓喜との対比を見事に描いています
 Pleni sunt…部分はこの曲の最初の盛り上がりです。「天」と「地」という印象的な言葉を、女声合唱と男声合唱の掛合いで描いています。短調のなかで、三和音と七の和音を執拗なまでに鳴らし続け、それを受けてmajestatis…で「あなたの威厳ある栄光が充ち満ちているのです!!!」とキリストへの讃美を力強く歓呼するのです。ハイドンが『天地創造』で短調の単純な和音で「光あれ!」と神が命じる様子を描いたことや、それからC-durの三和音で「光ありき!」と力強く歓呼の合唱をする場面をも思い起こさせます。単純な和音で自然なものではありますが、その自然感覚が鋭敏で、強烈でビビッドな表現へと昇華するブルックナーの素晴らしさが全面に溢れ出ていますね。
後編へ続く)


-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!
また、定演の告知動画も出来ました。ぜひご覧ください!


-過去の演奏が聴けるようになりました-
第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
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2017年11月12日日曜日

ELEGIAの詩と音楽(後編)

前編の続きです。


(詩を再掲:『ソルシコス的夜』)
~~~

雨の街では
夜はすべてのガラスである

口紅で
彩色された
たとえば君
の透明なジェラシィ

または
シャボンの円錐
の上
の金髪の月など

夢は
翼あるガラス
である

遠い
夜の空に
きらめいてる
ガラスの旗のように

純粋
のエスプリ
の結晶
の石竹いろの

アヴェニュをよぎつていく
永遠的なシルゥエット

ひとたばの

のなかに
消えていく
手袋など

いつぽんの針
のなかの風
のように
すべての声は
とつぜんに
ちぎれていく

                     詩集「真昼のレモン」より
~~~

他の4曲は詩がある程度センテンスで読めるのに対して、ソルシコス的夜はやや難解に見えます。
木下先生は前書きにて「実験的な作品はなるべく避けて、リリシズムとシュールな感覚がいいバランスで混在する、私好みの詩を多めに並べてみた」と述べていますが、同曲はどんな位置付けなのでしょうか?

曲の音楽面に目を向けてみます。8分の6拍子の中でのベルトーンは動的な印象ながらも、少しずつ音を変えつつ何度も出てくるため、再現性を印象付けます。
また「アヴェニュ」「ガラス」といった『1. ELEGIA』『3. 春のガラス』を想起させる単語に対応して、それぞれのニュアンスが強調されています。前者はその部分だけ『1. ELEGIA』と同じA-durになりますし、後者は2回ともテヌートが付けられています。
さらに、『2.奇妙な肖像』で頻出するオーギュメントの和音がこちらでも幾度か登場しており、Mysterioso感を際立たせます。繰り返されるベルトーンと共にそのようなイメージが断片的に反芻されながらも、最後はすべて「ちぎれて」いきます。

あくまで個人的な印象ですが、『5. ソルシコス的夜』は北園氏の美的センスを存分に味わいつつ、それまでの4曲を通して描いてきたイメージ・景色が走馬灯のごとくリフレインされる、まさしく終曲と言えるものなのかなと感じています。氏のラディカルな世界観が繊細かつシャープな音楽として表現されたこの曲は、傑作と言っても過言ではないと思います。

もちろん実際の演奏者としては大変な部分も多いですが、定期演奏会では少しでもこの世界観・雰囲気を感じて頂けるような演奏をしたいものです。

※厳密には「中」と「内」はニュアンスが異なるので内包と言うべきでないかもしれませんが、時間の制約上、より適切な表現を見つけきれませんでした。
(了)

-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!

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第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
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