2017年11月12日日曜日

ELEGIAの詩と音楽(後編)

前編の続きです。


(詩を再掲:『ソルシコス的夜』)
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雨の街では
夜はすべてのガラスである

口紅で
彩色された
たとえば君
の透明なジェラシィ

または
シャボンの円錐
の上
の金髪の月など

夢は
翼あるガラス
である

遠い
夜の空に
きらめいてる
ガラスの旗のように

純粋
のエスプリ
の結晶
の石竹いろの

アヴェニュをよぎつていく
永遠的なシルゥエット

ひとたばの

のなかに
消えていく
手袋など

いつぽんの針
のなかの風
のように
すべての声は
とつぜんに
ちぎれていく

                     詩集「真昼のレモン」より
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他の4曲は詩がある程度センテンスで読めるのに対して、ソルシコス的夜はやや難解に見えます。
木下先生は前書きにて「実験的な作品はなるべく避けて、リリシズムとシュールな感覚がいいバランスで混在する、私好みの詩を多めに並べてみた」と述べていますが、同曲はどんな位置付けなのでしょうか?

曲の音楽面に目を向けてみます。8分の6拍子の中でのベルトーンは動的な印象ながらも、少しずつ音を変えつつ何度も出てくるため、再現性を印象付けます。
また「アヴェニュ」「ガラス」といった『1. ELEGIA』『3. 春のガラス』を想起させる単語に対応して、それぞれのニュアンスが強調されています。前者はその部分だけ『1. ELEGIA』と同じA-durになりますし、後者は2回ともテヌートが付けられています。
さらに、『2.奇妙な肖像』で頻出するオーギュメントの和音がこちらでも幾度か登場しており、Mysterioso感を際立たせます。繰り返されるベルトーンと共にそのようなイメージが断片的に反芻されながらも、最後はすべて「ちぎれて」いきます。

あくまで個人的な印象ですが、『5. ソルシコス的夜』は北園氏の美的センスを存分に味わいつつ、それまでの4曲を通して描いてきたイメージ・景色が走馬灯のごとくリフレインされる、まさしく終曲と言えるものなのかなと感じています。氏のラディカルな世界観が繊細かつシャープな音楽として表現されたこの曲は、傑作と言っても過言ではないと思います。

もちろん実際の演奏者としては大変な部分も多いですが、定期演奏会では少しでもこの世界観・雰囲気を感じて頂けるような演奏をしたいものです。

※厳密には「中」と「内」はニュアンスが異なるので内包と言うべきでないかもしれませんが、時間の制約上、より適切な表現を見つけきれませんでした。
(了)

-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!

-過去の演奏が聴けるようになりました-
第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
の演奏がYouTube上で聴けるようになりました!ぜひどうそ!

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