Te per orbem terrarum sancta confitetur Ecclesia, Patrem immensae majestatis; Venerandum tuum verum et unicum Fillium; Sanctum quoque Paraclitum Spiritum. 全地にあまねき聖会は共に賛美し奉る 御身限りなき御いつの御父を、 いとたかき御身がまことの御独り子と、 また慰め主なる聖霊と。
Tu ad liberandum suscepturus hominem, non horruisti virginis uterum. Tu devicto mortis aculeo,aperuisti credentibus regna caelorum. 世を救うために人とならんとて、おとめの胎をいとわせ給わず、 死のとげに打ち勝ち、信ずる者のために天国を開き給えり。
Tu ad liberandum…で受胎告知を重々しい合唱のアカペラで描き出します。さらに、Tu devicto…はキリストの受難です。Tu(あなた) devicto(とげ)をベース先行で、それを追いかけるようにしてテナーがTu devicto aculeoの歌詞を繰り返し歌い、さらに女声がテナーのメロディーに追随してTu devicto mortis aculeoを歌います。ベースの執拗に繰り返されるLowG音や、テナーの跳躍によりキリスト受難の苦痛を重々しく描き出しています。そしてaperuisti…の部分。ひたすらに賛美されたキリスト、受難という死のとげに打ち勝ったキリストは天国を開くことができたと述べています。‘sehr ruhig’=「とても静かに」の指示の下、まずppのアカペラでソプラノ先行→他3パートという掛け合いでこの歌詞を歌うことで静寂の中でのキリストへの祈祷を表しています。そして次はオケ伴奏も加わり、FlとObが奏でる半音階に乗せて、ベース→アルト→ソプラノ+テナーの順で変則的なフーガ形式で同じaperuisti…の歌詞を歌います。
Tu ad dexteram Dei sedes, in Gloria Patris. Judex crederis esse venturus. 御身こそは、天主の右に坐し、御父の御栄のうちに。 裁き主として来りますと信ぜられ給う。
以上がTe Deum第1曲の概観となります。ブルックナーが描き出す徹底されたキリスト賛美の世界観が少しでも垣間見えたでしょうか。ちなみに第2~5曲を簡単にハイライトすると、第2曲 Te ergo は、キリストに思いをはせ犠牲となった殉教者を救ってくださいという祈りを、テノールソロを中心とするソリスト四重唱により静かに歌うアリア。第3曲 Aeterna fac は、神よ、あなたを信じ犠牲となった人々を数えてくださいという懇願をffのダイナミクスの中、D-mollのテンションコードで執拗に叫び続ける、半ば狂気ともいえるキリスト信仰。第4曲 Salvum fac は、第2曲を踏襲し、ソリストに合唱が加わる祈り。そして終曲 In te Domine speravi では、「In te, Domine, speravi(主よ、われ御身に依り頼みたり)」「non confundar in aeternum(わが望みは永久に空しからまじ)」という内容を、華やかなソリスト四重唱→合唱tutti→合唱フーガ→ソリスト四重唱→合唱tuttiという形式で歌い継いでいきます。クライマックスでは1stテナーのhiGisと2ndテナーのhiAisの全音のぶつかり、ソプラノのhiCのロングトーンなど、声楽的に尋常ではない高音域で展開されています。 ロマン派宗教音楽の最高傑作Te Deumの中でブルックナーが描き出す神性を、クリスマス・イヴという特別な日に、音楽の神アポロンの名がつく我々の合唱とソリストの方々で歌い上げる時間は、かけがえのないものとなるでしょう。12月24日、アポロン定演にて、こうご期待。 (了) (混声合唱団アポロン 68期テナー4thステージ技術系・孫指揮者 佐々木純哉)
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