2017年12月23日土曜日

今年一年を振り返って〜部長より〜

昨年12月18日に新体制に移行してから実に1年の月日が流れ、その間に様々なことがありました新入生の加入、関混連定演に合唱祭、そしてシアターピースを行ったジョイントコンサート、3回の合宿など思い返せばきりがありません。
合唱とは関係のない話をします。
私は夏合宿で訪れた大山にて満天の星を見ました。その星の輝きに感動を覚え、今でもその光景は目に焼き付いています。大山の夜は普段聞こえる車の音や人の声などは殆ど聞こえず、代わりに聞こえるのは地面を踏みしめる自分の足音と時折吹く風の音などで、目を閉じればそのまま自然に没入し自らもその中に溶け込むような、そのような心地がしました。
似た経験を私は春合宿でも経験していました。春合宿で淡路島を訪れていたのですが、そこでも星を見に外に出ていました。宿舎が海に面していたため、その際には風の音、波の音、鳥の鳴き声などから地球の鼓動と生を営む生物の魂を感じる、そんな気がしていました。
何の話をしているのかと思われるかもしれません。私は視覚的な話と聴覚的な話しかしていません。感覚を鋭敏なものにしていたとはいえ、私はこのように五感のうちこの二つだけで壮大な経験をした、ということが言いたかったのです。我々が演奏する合唱を聴くにこの二つの感覚が重要なのではないかと思っています。聴覚は言わずもがな、視覚も合唱では重要なのです。どんな表情で歌っているのかは勿論のこと、目線はどこを向いているか、体はどこを向いているか、方向が統一されている方が視覚的にも美しい。姿勢が良い方が見映えが良い…。
論理の飛躍と申しますか、どうしてこんな話をしたのでしょう…
(気を取り直して)
アポロンは今年度66期生から69期生が所属し活動に励んで参りました。今年の特徴として、合唱に励む一方でアポロン以外での活動や私生活の趣味にも精力的に取り組むなど非常に幅広い視野様々な考えを持つ多様性に満ちたメンバーが集まっていると個人的には思っております。
12月24日に開催します第55回記念定期演奏会は我々の1年の活動の集大成と言えます。このメンバーで活動するのも定期演奏会が最後となります。この非常に個性豊かなメンバーだからこそ今年のステージは成立していると言っても過言ではありません。当日皆様のお越しをお待ちしております。
(了)

アポロンと祝うクリスマスはどんな……?

今日は二本立てです。1ステ、3ステ、4ステとこれまで解説してきましたが、残る2ステについて簡単な紹介を、アルトのパートリーダーさんに書いてもらいました!2サプライズ要素も込めて、ちょっと出し惜しみです。どんなステージなのか、明日を楽しみに!


今回は第2ステージでお送りする曲から特にクリスマスをお祝いする2曲についてご紹介したいと思います。
 一曲目「O magnum mysterium」は直訳すると「おお、大いなる神秘」となり、処女マリアからイエスキリストが生まれたという奇跡の後継を描いています。そのためクリスマスの深夜に捧げられる典礼の曲が原曲となっています。これまでに数多くの作曲家がこのテキストに曲をつけていて、いずれも静かで美しい曲調で、深夜に歌われる情景が浮かんできます。今回はスペインの作曲家であるハビエル・ブストー作曲のバージョンでお送りします。この曲の聞きどころは何と言っても冒頭です。各人が自由に「O magnum mysterium」と歌う声が重なり、徐々に和音を変えながら消えていく様はまさに「神秘的」です。本番では光の演出も加わりますので、ぜひ耳だけではなく目でも神秘を感じていただければ幸いです。

 二曲目「gaudete」は直訳すると「歓べ」となり、こちらも一曲目と同じくキリストの誕生を賛美する歌詞になっています。しかし曲調は一曲目の幻想的から雰囲気くら変わって力強い曲調で演奏されます。この曲も多くの人に編曲がされており、今回はKing's singersのメンバーであるBrian kay の編曲でお送りします。King's singersは男声4人のカルテットということもあり、男声がとてもカッコイイ編曲になっています。特に前半と後半で登場する男声ソロにご注目です!


この記事で一連続いて来た、定演のステージ紹介はお終いです。
それでは明日ホールでお会いしましょう!
(了)

ロマンチストの彼とつれない彼女(後編)

 前編の続きです. 続きを書くのを渋っていたら二か月も空いてしまいました, どんな話だったか覚えていますでしょうか.
 さて, 冬の到来は, こうしたイメージの反転をもたらすだけでなく, ロマンチックな初夏の終わりが逃れようのないものであることをも告げます. 彼が挙げる喜びは一時的な, 儚いものに過ぎないと突き付けるのです.
 Raleighの詩の9行目以下を見てみましょう. 「花はしぼみ、豊かな野原は厳しい冬の前に実りの終わりを告げる.」そして, 13行目以下には美しい贈り物の数々は一緒くたに扱われ (たった二行に押し込められています. 悲しい.) , みな壊れたり枯れたりしてはやがて忘れされてしまうのだと返すのです. この歌詞部をメロディに歌う女声パートの下で掛け合いをする男声パートの旋律は, あまりに無下な仕打ちを嘆くかのようです.
 細々とした解説はここまでにして, 悲しい掛け合いも終わりへ向かうことにしましょう. 21行目から最後までの詩は女声の叶わぬ夢を終わるような, どこか切ないようなメロディーで歌われます. 「もし若さは続くもので, 愛はしぼむことなく, 楽しいことは終わることなくいつも満ち足りているのだとしたら......」(21-22行目) 「あなたの恋人になりましょう.」
 これまでの返しを見てきて, この最後はとても皮肉に映りますね. 永遠なものなんてないのに, どうして恋人になってくれると言うのでしょう? でも明日定演で聴くときには, そのメロディーも相まって切実な思いに聴こえるかもしれません. 実際, そうとも読める返しだと思いませんか?(とても屈折したものではありますが)
    本当のところは全く知りませんが, 自分には作曲者であるJohn Rutterはこの詩を意図してそう解釈し直したように思えるのです. なんだか少しずるい曲解かもしれませんね. でもそんな結末だからこそ, この"Come live with me"は面白い曲だと思います.
 ところで, 明日の本番ではわれらがアポロン男声陣が女声パートと, この掛け合いをします. そう考えると明日が楽しみになってきたりするのではないでしょうか.
 と思うのですが僕だけでしょうか?
(了)

2017年12月15日金曜日

ブルックナーの描く神性(後編)

お待たせしました!前編の続きです。


Te gloriosus Apostolorum chorus,
 Te Prophetarum laudabilis numerus,
 Te Martyrum candidatus Laudat exercitus.
 誉に輝く使徒のむれも御身を、
褒めたとうべき預言者の集まりも御身を、
潔き殉教者の一軍皆もろともに御身をたたえ

再び主題旋律のユニゾンへ。神キリストを賛美するものとして、新たに「使徒」「預言者」「殉教者」が加えて明示され、神への賛美の普遍性が一層強まる。賛美する主体としてのこれらの存在を力強いユニゾンで歌い上げる。執拗にTe(あなた)の語で始まって神を讃える存在を述べてゆく。それぞれの‘Te’は違う拍で入っていき、歌い手には正確にブレスを合わせる必要性。Te Martyrum…では主題ゼグエンツがD-mollに上向し、感情の高ぶりを表す。主題ユニゾン多角性をもって歌い上げることにより、キリストへの思いが一層強めて謳われます。

 Te per orbem terrarum sancta confitetur Ecclesia,
 Patrem immensae majestatis;
 Venerandum tuum verum et unicum Fillium;
 Sanctum quoque Paraclitum Spiritum.
 全地にあまねき聖会は共に賛美し奉る
 御身限りなき御いつの御父を、
 いとたかき御身がまことの御独り子と、
 また慰め主なる聖霊と。

 Te…Ecclesiaでは主題のゼグエンツのユニゾンがさらにEs-durに上向し、神への強い賛美をfffの大音量で歓呼します。‘confitetetur’の語で和音に展開し、EcclesiaでF-mollのIの和音で終結。一転、Patrem…から再びユニゾンに戻るとともに、ダイナミクスがPに。G-mollの厳粛な雰囲気の中で、「御父」「その御父の御独り子=イエス・キリスト」「主なる精霊」を讃えます。すなわち、キリスト教の神の定義・三位一体です。これまでf系でひたすら力強く神を賛美していたのに対比して、p系のユニゾンにより、キリスト教で最も根本的な教義たる三位一体を静かに印象付け、厳かに神への賛美を表現しているのです。(4thステージ技術系である私個人的に、このコントラストがキリスト教義の神秘性が感じられて最も大好きです。)

 Tu rex gloriae, Chiriste.
 Tu Patris sempiternus es Filius.
 御身、栄えの大君なるキリストよ、
 御身こそは聖父のとこしえ聖子。

 この部分は第1曲Te deum laudamusの大きな佳境でしょう。ここから神の呼称が‘Te’から‘Tu’に変わっています。これまで述べてきたひたすら賛美する強い思い、賛美する様々な存在、三位一体の教義などを踏まえ、さらに神を賛美したいという気持ちが高揚し、親近性の高まった呼称となっています。そしてここではじめて直接的にChriste=キリストの名前が呼ばれるのです。神を賛美することとは、すなわちキリストを賛美することである、と。fffのダイナミクスでChri(G♭)→-ste(D♭)のコードで歓呼。

 Tu ad liberandum suscepturus hominem, non horruisti virginis uterum.
 Tu devicto mortis aculeo,aperuisti credentibus regna caelorum.
 世を救うために人とならんとて、おとめの胎をいとわせ給わず、
 死のとげに打ち勝ち、信ずる者のために天国を開き給えり。

 Tu ad liberandum…で受胎告知を重々しい合唱のアカペラで描き出します。さらに、Tu devicto…はキリストの受難です。Tu(あなた) devicto(とげ)をベース先行で、それを追いかけるようにしてテナーがTu devicto aculeoの歌詞を繰り返し歌い、さらに女声がテナーのメロディーに追随してTu devicto mortis aculeoを歌います。ベースの執拗に繰り返されるLowG音や、テナーの跳躍によりキリスト受難の苦痛を重々しく描き出しています。そしてaperuisti…の部分。ひたすらに賛美されたキリスト、受難という死のとげに打ち勝ったキリストは天国を開くことができたと述べています。‘sehr ruhig’=「とても静かに」の指示の下、まずppのアカペラでソプラノ先行→他3パートという掛け合いでこの歌詞を歌うことで静寂の中でのキリストへの祈祷を表しています。そして次はオケ伴奏も加わり、FlとObが奏でる半音階に乗せて、ベース→アルト→ソプラノ+テナーの順で変則的なフーガ形式で同じaperuisti…の歌詞を歌います。

 Tu ad dexteram Dei sedes, in Gloria Patris.
 Judex crederis esse venturus.
 御身こそは、天主の右に坐し、御父の御栄のうちに。
 裁き主として来りますと信ぜられ給う。

 前の変則的なフーガ部分はregna caelorumでtuttiとなりcrescendo。そして再現部となり、fffの大音量のダイナミクスの中で強烈な主題のユニゾンを歌い上げ、キリストを荘厳に賛美し、第1曲が終結します。

 以上がTe Deum第1曲の概観となります。ブルックナーが描き出す徹底されたキリスト賛美の世界観が少しでも垣間見えたでしょうか。ちなみに第2~5曲を簡単にハイライトすると、第2曲 Te ergo は、キリストに思いをはせ犠牲となった殉教者を救ってくださいという祈りを、テノールソロを中心とするソリスト四重唱により静かに歌うアリア。第3曲 Aeterna fac は、神よ、あなたを信じ犠牲となった人々を数えてくださいという懇願をffのダイナミクスの中、D-mollのテンションコードで執拗に叫び続ける、半ば狂気ともいえるキリスト信仰。第4曲 Salvum fac は、第2曲を踏襲し、ソリストに合唱が加わる祈り。そして終曲 In te Domine speravi では、「In te, Domine, speravi(主よ、われ御身に依り頼みたり)」「non confundar in aeternum(わが望みは永久に空しからまじ)」という内容を、華やかなソリスト四重唱→合唱tutti→合唱フーガ→ソリスト四重唱→合唱tuttiという形式で歌い継いでいきます。クライマックスでは1stテナーのhiGisと2ndテナーのhiAisの全音のぶつかり、ソプラノのhiCのロングトーンなど、声楽的に尋常ではない高音域で展開されています。
 ロマン派宗教音楽の最高傑作Te Deumの中でブルックナーが描き出す神性を、クリスマス・イヴという特別な日に、音楽の神アポロンの名がつく我々の合唱とソリストの方々で歌い上げる時間は、かけがえのないものとなるでしょう。12月24日、アポロン定演にて、こうご期待。
(了)
(混声合唱団アポロン 68期テナー4thステージ技術系・孫指揮者 佐々木純哉)


-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!
また、定演の告知動画も出来ました。ぜひご覧ください!


-過去の演奏が聴けるようになりました-
第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
の演奏がYouTube上で聴けるようになりました!ぜひどうそ!