2017年12月23日土曜日

今年一年を振り返って〜部長より〜

昨年12月18日に新体制に移行してから実に1年の月日が流れ、その間に様々なことがありました新入生の加入、関混連定演に合唱祭、そしてシアターピースを行ったジョイントコンサート、3回の合宿など思い返せばきりがありません。
合唱とは関係のない話をします。
私は夏合宿で訪れた大山にて満天の星を見ました。その星の輝きに感動を覚え、今でもその光景は目に焼き付いています。大山の夜は普段聞こえる車の音や人の声などは殆ど聞こえず、代わりに聞こえるのは地面を踏みしめる自分の足音と時折吹く風の音などで、目を閉じればそのまま自然に没入し自らもその中に溶け込むような、そのような心地がしました。
似た経験を私は春合宿でも経験していました。春合宿で淡路島を訪れていたのですが、そこでも星を見に外に出ていました。宿舎が海に面していたため、その際には風の音、波の音、鳥の鳴き声などから地球の鼓動と生を営む生物の魂を感じる、そんな気がしていました。
何の話をしているのかと思われるかもしれません。私は視覚的な話と聴覚的な話しかしていません。感覚を鋭敏なものにしていたとはいえ、私はこのように五感のうちこの二つだけで壮大な経験をした、ということが言いたかったのです。我々が演奏する合唱を聴くにこの二つの感覚が重要なのではないかと思っています。聴覚は言わずもがな、視覚も合唱では重要なのです。どんな表情で歌っているのかは勿論のこと、目線はどこを向いているか、体はどこを向いているか、方向が統一されている方が視覚的にも美しい。姿勢が良い方が見映えが良い…。
論理の飛躍と申しますか、どうしてこんな話をしたのでしょう…
(気を取り直して)
アポロンは今年度66期生から69期生が所属し活動に励んで参りました。今年の特徴として、合唱に励む一方でアポロン以外での活動や私生活の趣味にも精力的に取り組むなど非常に幅広い視野様々な考えを持つ多様性に満ちたメンバーが集まっていると個人的には思っております。
12月24日に開催します第55回記念定期演奏会は我々の1年の活動の集大成と言えます。このメンバーで活動するのも定期演奏会が最後となります。この非常に個性豊かなメンバーだからこそ今年のステージは成立していると言っても過言ではありません。当日皆様のお越しをお待ちしております。
(了)

アポロンと祝うクリスマスはどんな……?

今日は二本立てです。1ステ、3ステ、4ステとこれまで解説してきましたが、残る2ステについて簡単な紹介を、アルトのパートリーダーさんに書いてもらいました!2サプライズ要素も込めて、ちょっと出し惜しみです。どんなステージなのか、明日を楽しみに!


今回は第2ステージでお送りする曲から特にクリスマスをお祝いする2曲についてご紹介したいと思います。
 一曲目「O magnum mysterium」は直訳すると「おお、大いなる神秘」となり、処女マリアからイエスキリストが生まれたという奇跡の後継を描いています。そのためクリスマスの深夜に捧げられる典礼の曲が原曲となっています。これまでに数多くの作曲家がこのテキストに曲をつけていて、いずれも静かで美しい曲調で、深夜に歌われる情景が浮かんできます。今回はスペインの作曲家であるハビエル・ブストー作曲のバージョンでお送りします。この曲の聞きどころは何と言っても冒頭です。各人が自由に「O magnum mysterium」と歌う声が重なり、徐々に和音を変えながら消えていく様はまさに「神秘的」です。本番では光の演出も加わりますので、ぜひ耳だけではなく目でも神秘を感じていただければ幸いです。

 二曲目「gaudete」は直訳すると「歓べ」となり、こちらも一曲目と同じくキリストの誕生を賛美する歌詞になっています。しかし曲調は一曲目の幻想的から雰囲気くら変わって力強い曲調で演奏されます。この曲も多くの人に編曲がされており、今回はKing's singersのメンバーであるBrian kay の編曲でお送りします。King's singersは男声4人のカルテットということもあり、男声がとてもカッコイイ編曲になっています。特に前半と後半で登場する男声ソロにご注目です!


この記事で一連続いて来た、定演のステージ紹介はお終いです。
それでは明日ホールでお会いしましょう!
(了)

ロマンチストの彼とつれない彼女(後編)

 前編の続きです. 続きを書くのを渋っていたら二か月も空いてしまいました, どんな話だったか覚えていますでしょうか.
 さて, 冬の到来は, こうしたイメージの反転をもたらすだけでなく, ロマンチックな初夏の終わりが逃れようのないものであることをも告げます. 彼が挙げる喜びは一時的な, 儚いものに過ぎないと突き付けるのです.
 Raleighの詩の9行目以下を見てみましょう. 「花はしぼみ、豊かな野原は厳しい冬の前に実りの終わりを告げる.」そして, 13行目以下には美しい贈り物の数々は一緒くたに扱われ (たった二行に押し込められています. 悲しい.) , みな壊れたり枯れたりしてはやがて忘れされてしまうのだと返すのです. この歌詞部をメロディに歌う女声パートの下で掛け合いをする男声パートの旋律は, あまりに無下な仕打ちを嘆くかのようです.
 細々とした解説はここまでにして, 悲しい掛け合いも終わりへ向かうことにしましょう. 21行目から最後までの詩は女声の叶わぬ夢を終わるような, どこか切ないようなメロディーで歌われます. 「もし若さは続くもので, 愛はしぼむことなく, 楽しいことは終わることなくいつも満ち足りているのだとしたら......」(21-22行目) 「あなたの恋人になりましょう.」
 これまでの返しを見てきて, この最後はとても皮肉に映りますね. 永遠なものなんてないのに, どうして恋人になってくれると言うのでしょう? でも明日定演で聴くときには, そのメロディーも相まって切実な思いに聴こえるかもしれません. 実際, そうとも読める返しだと思いませんか?(とても屈折したものではありますが)
    本当のところは全く知りませんが, 自分には作曲者であるJohn Rutterはこの詩を意図してそう解釈し直したように思えるのです. なんだか少しずるい曲解かもしれませんね. でもそんな結末だからこそ, この"Come live with me"は面白い曲だと思います.
 ところで, 明日の本番ではわれらがアポロン男声陣が女声パートと, この掛け合いをします. そう考えると明日が楽しみになってきたりするのではないでしょうか.
 と思うのですが僕だけでしょうか?
(了)

2017年12月15日金曜日

ブルックナーの描く神性(後編)

お待たせしました!前編の続きです。


Te gloriosus Apostolorum chorus,
 Te Prophetarum laudabilis numerus,
 Te Martyrum candidatus Laudat exercitus.
 誉に輝く使徒のむれも御身を、
褒めたとうべき預言者の集まりも御身を、
潔き殉教者の一軍皆もろともに御身をたたえ

再び主題旋律のユニゾンへ。神キリストを賛美するものとして、新たに「使徒」「預言者」「殉教者」が加えて明示され、神への賛美の普遍性が一層強まる。賛美する主体としてのこれらの存在を力強いユニゾンで歌い上げる。執拗にTe(あなた)の語で始まって神を讃える存在を述べてゆく。それぞれの‘Te’は違う拍で入っていき、歌い手には正確にブレスを合わせる必要性。Te Martyrum…では主題ゼグエンツがD-mollに上向し、感情の高ぶりを表す。主題ユニゾン多角性をもって歌い上げることにより、キリストへの思いが一層強めて謳われます。

 Te per orbem terrarum sancta confitetur Ecclesia,
 Patrem immensae majestatis;
 Venerandum tuum verum et unicum Fillium;
 Sanctum quoque Paraclitum Spiritum.
 全地にあまねき聖会は共に賛美し奉る
 御身限りなき御いつの御父を、
 いとたかき御身がまことの御独り子と、
 また慰め主なる聖霊と。

 Te…Ecclesiaでは主題のゼグエンツのユニゾンがさらにEs-durに上向し、神への強い賛美をfffの大音量で歓呼します。‘confitetetur’の語で和音に展開し、EcclesiaでF-mollのIの和音で終結。一転、Patrem…から再びユニゾンに戻るとともに、ダイナミクスがPに。G-mollの厳粛な雰囲気の中で、「御父」「その御父の御独り子=イエス・キリスト」「主なる精霊」を讃えます。すなわち、キリスト教の神の定義・三位一体です。これまでf系でひたすら力強く神を賛美していたのに対比して、p系のユニゾンにより、キリスト教で最も根本的な教義たる三位一体を静かに印象付け、厳かに神への賛美を表現しているのです。(4thステージ技術系である私個人的に、このコントラストがキリスト教義の神秘性が感じられて最も大好きです。)

 Tu rex gloriae, Chiriste.
 Tu Patris sempiternus es Filius.
 御身、栄えの大君なるキリストよ、
 御身こそは聖父のとこしえ聖子。

 この部分は第1曲Te deum laudamusの大きな佳境でしょう。ここから神の呼称が‘Te’から‘Tu’に変わっています。これまで述べてきたひたすら賛美する強い思い、賛美する様々な存在、三位一体の教義などを踏まえ、さらに神を賛美したいという気持ちが高揚し、親近性の高まった呼称となっています。そしてここではじめて直接的にChriste=キリストの名前が呼ばれるのです。神を賛美することとは、すなわちキリストを賛美することである、と。fffのダイナミクスでChri(G♭)→-ste(D♭)のコードで歓呼。

 Tu ad liberandum suscepturus hominem, non horruisti virginis uterum.
 Tu devicto mortis aculeo,aperuisti credentibus regna caelorum.
 世を救うために人とならんとて、おとめの胎をいとわせ給わず、
 死のとげに打ち勝ち、信ずる者のために天国を開き給えり。

 Tu ad liberandum…で受胎告知を重々しい合唱のアカペラで描き出します。さらに、Tu devicto…はキリストの受難です。Tu(あなた) devicto(とげ)をベース先行で、それを追いかけるようにしてテナーがTu devicto aculeoの歌詞を繰り返し歌い、さらに女声がテナーのメロディーに追随してTu devicto mortis aculeoを歌います。ベースの執拗に繰り返されるLowG音や、テナーの跳躍によりキリスト受難の苦痛を重々しく描き出しています。そしてaperuisti…の部分。ひたすらに賛美されたキリスト、受難という死のとげに打ち勝ったキリストは天国を開くことができたと述べています。‘sehr ruhig’=「とても静かに」の指示の下、まずppのアカペラでソプラノ先行→他3パートという掛け合いでこの歌詞を歌うことで静寂の中でのキリストへの祈祷を表しています。そして次はオケ伴奏も加わり、FlとObが奏でる半音階に乗せて、ベース→アルト→ソプラノ+テナーの順で変則的なフーガ形式で同じaperuisti…の歌詞を歌います。

 Tu ad dexteram Dei sedes, in Gloria Patris.
 Judex crederis esse venturus.
 御身こそは、天主の右に坐し、御父の御栄のうちに。
 裁き主として来りますと信ぜられ給う。

 前の変則的なフーガ部分はregna caelorumでtuttiとなりcrescendo。そして再現部となり、fffの大音量のダイナミクスの中で強烈な主題のユニゾンを歌い上げ、キリストを荘厳に賛美し、第1曲が終結します。

 以上がTe Deum第1曲の概観となります。ブルックナーが描き出す徹底されたキリスト賛美の世界観が少しでも垣間見えたでしょうか。ちなみに第2~5曲を簡単にハイライトすると、第2曲 Te ergo は、キリストに思いをはせ犠牲となった殉教者を救ってくださいという祈りを、テノールソロを中心とするソリスト四重唱により静かに歌うアリア。第3曲 Aeterna fac は、神よ、あなたを信じ犠牲となった人々を数えてくださいという懇願をffのダイナミクスの中、D-mollのテンションコードで執拗に叫び続ける、半ば狂気ともいえるキリスト信仰。第4曲 Salvum fac は、第2曲を踏襲し、ソリストに合唱が加わる祈り。そして終曲 In te Domine speravi では、「In te, Domine, speravi(主よ、われ御身に依り頼みたり)」「non confundar in aeternum(わが望みは永久に空しからまじ)」という内容を、華やかなソリスト四重唱→合唱tutti→合唱フーガ→ソリスト四重唱→合唱tuttiという形式で歌い継いでいきます。クライマックスでは1stテナーのhiGisと2ndテナーのhiAisの全音のぶつかり、ソプラノのhiCのロングトーンなど、声楽的に尋常ではない高音域で展開されています。
 ロマン派宗教音楽の最高傑作Te Deumの中でブルックナーが描き出す神性を、クリスマス・イヴという特別な日に、音楽の神アポロンの名がつく我々の合唱とソリストの方々で歌い上げる時間は、かけがえのないものとなるでしょう。12月24日、アポロン定演にて、こうご期待。
(了)
(混声合唱団アポロン 68期テナー4thステージ技術系・孫指揮者 佐々木純哉)


-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!
また、定演の告知動画も出来ました。ぜひご覧ください!


-過去の演奏が聴けるようになりました-
第53回定期演奏会の第1ステージ(平行世界、飛行ねこの沈黙)
第54回定期演奏会の第3ステージ(嫁ぐ娘に)
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2017年11月26日日曜日

ブルックナーの描く神性(前編)


 企画記事第3弾です。今度の定期演奏会では第4ステージにブルックナーの代表的な作品である "Te Deum" を演奏します。なかなか難儀ですが、それだけに非常に魅力ある作品だと思っています。
 そんな "Te Deum" ですが、解説記事を孫指揮者(来年度の副指揮者)である佐々木君をお願いしたところ、彼の才覚と情熱溢れるような原稿が返って来、実際に紙面を溢れてしまいました。というわけで今回も分割記事でお届けします!


 アントン・ブルックナー(1824-1896)はオーストリアの作曲家です。10歳頃からオルガン奏者として活躍。30歳頃からワーグナーに傾倒し、本格的に音楽理論の研究を始めます。40歳を過ぎてからウィーン国立音楽院の教授に就任、交響曲の作曲をはじめます。『交響曲第7番』で成功を収め、数々の交響曲を残しつつも、『交響曲第9番』が未完のうちにこの世を去りました。
 ブルックナーは非常に敬虔なキリスト教徒でした。質素な服装、マナー、敬虔なカトリック信仰ゆえに、当時ユダヤ人資本家が推し進める資本主義化・それに伴う社会の変化に危機感をもつドイツ人にとって、古き良き自由主義的改革以前のオーストリア時代を象徴する人間として尊ばれるノスタルジックな存在だったといいます。数々の宗教曲も残しましたが、そのなかでも、今回アポロンが定期演奏会で取り上げる“Te Deum”は、ロマン派音楽における宗教曲の最高峰と言われています。(余談ですが、“Te Deum”が作曲されたのは先に挙げた『交響曲第7番』完成直後で、楽曲の構造、和声感が非常によく似ています。特に、Te Deumの終曲のフーガ部分は、交響曲第7番の第二楽章Adagioと瓜二つなので、気になる方は音源を探ってみてください。)
 Te Deumはキリスト教カトリックのおける聖歌で、テクスト冒頭“Te Deum laudamus”(神であるあなたを我らはあがめます)から、この名称で呼ばれます。その内容は一貫して「キリストへの賛美」です。当時キリスト教を懐疑的にとらえる風潮が広まり、オペラなど世俗的な音楽が熱狂される中で、キリスト教の教義を真正面からとらえた音楽を生み出したことに、ブルックナーの敬虔な精神がうかがえます。
 ブルックナー作曲“Te Deum”は第1曲「Te Deum laudamus」、第2曲「Te ergo」、第3曲「Aeterna fac」、第4曲「Salvum fac」、終曲「In te, Domine speravi」の全5曲からなりますが、今回はTe Deum第1曲「Te Deum laudamus」に焦点を当ててテクストはどのようなものか、そしてブルックナーはそれをどのような形で音楽にしたのかを紹介します。

 Te Deum laudamus: te Dominum confitemur.
 Te aeternum Patrem, omnis terra veneratur.
 神である御身をわれらはたたえ、主なる御身をわれらは讃美します。
 永遠の御父なる御身を全地は拝みます。

 第1曲冒頭のこの歌詞は、合唱の力強いユニゾンで神を讃美する精神が歌われています。このような印象的なユニゾンを通した高い精神性は全曲を通して多用されています。また、各小節第1拍に山型アクセント「^」を、それ以外の音符には通常のアクセント「>」が付けられています。オーケストラ伴奏でパイプオルガンや金管楽器の大音響の中で、神への讃美の歌声が埋もれないように、といった意図でもあるのでしょうか。

 Tibi omnes Angeli, tibi coeli et universae potestates,
 Tibi Cherubim et Seraphim, incessabili voce prochamant:
 すべての天使も、御身に向かい、天とすべての権力がある者も、
 ケルビムも、セラフィムも、御身に向かい、絶え間なく声高らかにうたいます。

 この部分ソプラノ、アルト、テノールのソロ三重唱で歌われます。前の合唱部分でキリストへの讃美を受け、「神を讃美するのは、我らだけではなく、すべての天使、天、この世の権力者など、この世のありとあらゆるものである」ということを述べています。この部分はソリスト同士の掛合い。G-durのコードに始まりますが、ソリストの掛合いの度に相次ぐ転調。キリストへの讃美は、ありとあらゆるものからのものであるということを象徴するかのように。

 Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus Deus Sabaoth.
 Pleni sunt coeli et terra majestatis gloriae tuae.
 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の神なる主。
 天も地も、満ちている 御身の栄光ある御いつに、と。

 ソリスト三重唱から、ふたたび合唱へ。F-mollの静かで不穏な雰囲気。Sanctus(聖なるかな)という言葉は、1回目はピアニッシモで、2回目はピアノで、そして三回目ではC-durの華々しいフォルティッシモで歌われます。Sanctusは神を讃美する象徴的な言葉ですが、その同一の言葉のppからffへの移り変わりは、内なる讃美と、外に発散させるような爆発的な歓喜との対比を見事に描いています
 Pleni sunt…部分はこの曲の最初の盛り上がりです。「天」と「地」という印象的な言葉を、女声合唱と男声合唱の掛合いで描いています。短調のなかで、三和音と七の和音を執拗なまでに鳴らし続け、それを受けてmajestatis…で「あなたの威厳ある栄光が充ち満ちているのです!!!」とキリストへの讃美を力強く歓呼するのです。ハイドンが『天地創造』で短調の単純な和音で「光あれ!」と神が命じる様子を描いたことや、それからC-durの三和音で「光ありき!」と力強く歓呼の合唱をする場面をも思い起こさせます。単純な和音で自然なものではありますが、その自然感覚が鋭敏で、強烈でビビッドな表現へと昇華するブルックナーの素晴らしさが全面に溢れ出ていますね。
後編へ続く)


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2017年11月12日日曜日

ELEGIAの詩と音楽(後編)

前編の続きです。


(詩を再掲:『ソルシコス的夜』)
~~~

雨の街では
夜はすべてのガラスである

口紅で
彩色された
たとえば君
の透明なジェラシィ

または
シャボンの円錐
の上
の金髪の月など

夢は
翼あるガラス
である

遠い
夜の空に
きらめいてる
ガラスの旗のように

純粋
のエスプリ
の結晶
の石竹いろの

アヴェニュをよぎつていく
永遠的なシルゥエット

ひとたばの

のなかに
消えていく
手袋など

いつぽんの針
のなかの風
のように
すべての声は
とつぜんに
ちぎれていく

                     詩集「真昼のレモン」より
~~~

他の4曲は詩がある程度センテンスで読めるのに対して、ソルシコス的夜はやや難解に見えます。
木下先生は前書きにて「実験的な作品はなるべく避けて、リリシズムとシュールな感覚がいいバランスで混在する、私好みの詩を多めに並べてみた」と述べていますが、同曲はどんな位置付けなのでしょうか?

曲の音楽面に目を向けてみます。8分の6拍子の中でのベルトーンは動的な印象ながらも、少しずつ音を変えつつ何度も出てくるため、再現性を印象付けます。
また「アヴェニュ」「ガラス」といった『1. ELEGIA』『3. 春のガラス』を想起させる単語に対応して、それぞれのニュアンスが強調されています。前者はその部分だけ『1. ELEGIA』と同じA-durになりますし、後者は2回ともテヌートが付けられています。
さらに、『2.奇妙な肖像』で頻出するオーギュメントの和音がこちらでも幾度か登場しており、Mysterioso感を際立たせます。繰り返されるベルトーンと共にそのようなイメージが断片的に反芻されながらも、最後はすべて「ちぎれて」いきます。

あくまで個人的な印象ですが、『5. ソルシコス的夜』は北園氏の美的センスを存分に味わいつつ、それまでの4曲を通して描いてきたイメージ・景色が走馬灯のごとくリフレインされる、まさしく終曲と言えるものなのかなと感じています。氏のラディカルな世界観が繊細かつシャープな音楽として表現されたこの曲は、傑作と言っても過言ではないと思います。

もちろん実際の演奏者としては大変な部分も多いですが、定期演奏会では少しでもこの世界観・雰囲気を感じて頂けるような演奏をしたいものです。

※厳密には「中」と「内」はニュアンスが異なるので内包と言うべきでないかもしれませんが、時間の制約上、より適切な表現を見つけきれませんでした。
(了)

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2017年11月10日金曜日

ELEGIAの詩と音楽(前編)

企画記事第2弾です。今回は第3ステージ、『ア・カペラ混声合唱のための ELEGIA』(作曲:木下牧子、作詞:北園克衛)を取り上げ、その魅力について正指揮者に語ってもらいました!


第3ステージにて演奏する『ア・カペラ混声合唱のための ELEGIA』に関して、詩の北園克衛氏の特徴に触れつつ、個人的な見解を交えながら書きたいと思います。

北園克衛氏は主にモダニズムの中で活躍した前衛詩人であり、「実験」として感覚的な作品をいくつも発表しました。1959年に発表された「単調な空間」はその最たる例と言えます。

~~~

1.
白い四角
のなか
の白い四角
のなか
の黒い四角
のなか
の黒い四角
のなか
の黄色い四角
のなか
の黄色い四角
のなか
の白い四角
のなか
の白い四角


2.

の中の白
の中の黒
の中の黒
の中の黄
の中の黄
の中の白
の中の白


3.

の三角
の髭
のガラス


の三角
の馬
のパラソル


の三角
の煙

ビルディング


の三角
の星

ハンカチイフ


4.
白い四角
のなか
の白い四角
のなか
の白い四角
のなか
の白い四角
のなか
の白い四角

~~~

一見むつかしく、よく分かりません。
北園氏は、日本におけるコンクリート・ポエトリー(意味性を排除し形式や視覚的効果に着目した詩)の先駆者でした。また、その後には写真を詩そのものとして用いる「プラスティック・ポエム」を提唱しています。すなわち、ヴィジュアル的な感覚を重視しています。

この作品に限らず、改行後の文頭に「の」を用いるパターンが頻出しますが、これはメタ・フィジカルな世界をイメージの明瞭さを保ったまま表現する試み、といえるかもしれません。
例えば


の三角
の馬
のパラソル

本来は前後と繋がっているはずの助詞「の」が、改行によってある種断絶されています。やや乱暴な言い方をすると、この断絶により、単語のイメージ(≠意味)が保たれたまま「~の…」という内包が強調されます。(※)
肝要なのは、イメージが保たれたままだという事です。これが

白の三角の馬のパラソル

となると、区切りが分かりづらく、イメージの輪郭もぼやけてしまいます。
読点を用いたとしても、助詞の手前で使わない限り形而上的な感覚は変わってしまうでしょうし、手前で使ったとしても改行の効果には及ばないでしょう。

さて、ここから『ELEGIA』の話になります。
『単調な空間』と最も近い感覚で詩が書かれているのは、終曲の『5. ソルシコス的夜』です。

~~~

雨の街では
夜はすべてのガラスである

口紅で
彩色された
たとえば君
の透明なジェラシィ

または
シャボンの円錐
の上
の金髪の月など

夢は
翼あるガラス
である

遠い
夜の空に
きらめいてる
ガラスの旗のように

純粋
のエスプリ
の結晶
の石竹いろの

アヴェニュをよぎつていく
永遠的なシルゥエット

ひとたばの

のなかに
消えていく
手袋など

いつぽんの針
のなかの風
のように
すべての声は
とつぜんに
ちぎれていく

                     詩集「真昼のレモン」より
~~~
後編へ続く)


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2017年10月13日金曜日

ロマンチストの彼とつれない彼女(前編)

 定期演奏会まであと二か月少しとなりました. 私たちも日々練習を重ねています.
 演奏会ではさまざまな曲を演奏する予定ですが, 今日はその中から第一ステージで演奏する曲集, "Birthday Madrigals"の中から"Come live with me"を取り上げて, その魅力を紹介したいと思います. 
Birthday Madrigalsはジャズの名手であるジョージ・シアリングの誕生日を祝って作られた曲集で, その詩はエリザベス1世の治世の頃に書かれたものから採られています.
 "Come live with me"は二つの詩の掛け合いから成っていて, 一つはChristopher Marloweによる"The passionate shepherd to His Love", もう一つはSir Walter Raleighによる"The Nymph’s Reply to the Shepherd"から引用されています.
Marloweの詩は羊飼いの恋の呼びかけを綴ったものであり(冒頭の一行"Come live with me and be my love"は, 有名な定番文句なんだとか?), Raleighの詩は彼の呼びかけに対する返事という形で対になっているのです.
二つの詩を見てみましょう.
The Passionate Shepherd to His Love
by Christopher Marlowe

Come live with me and be my love,
And we will all the pleasures prove
That valleys, groves, hills, and fields
Woods or steepy mountain yields

And we will sit upon the rocks,
Seeing the shepherds feed their flocks
By shallow rivers to whose falls
Melodious birds sing madrigals.

And I will make thee beds of roses
And a thousand fragrant posies,
A cap of flower, and a kirtle
Embroidered all with leaves of myrtle;

A gown made of the finest wool
Which from our pretty lambs we pull;
Fair lined slippers for the cold
With buckles of the purest gold;

A belt of straw and ivy buds,
With coral clasps and amber studs;
And if these pleasures may thee move,
Come live with me and be my love.

The shepherds' swains shall dance and sing
For thy delight each May morning:
If these delights thy mind may move,
Then live with me and be my love.
The Nymph's Reply to the Shepherd
by Sir Walter Raleigh

If all the world and love were young,
And truth in every shepherd's tongue,
These pretty pleasures might me move
To live with thee and be thy love.

Time drives the flocks from field to fold,
When rivers rage and rocks grow cold;
And Philomel becometh dumb;
The rest complain of cares to come.

The flowers do fade, and wanton fields
To wayward winter reckoning yields;
A honey tongue, a heart of gall,
Is fancy's spring, but sorrow's fall.

Thy gowns, thy shoes, thy bed of roses,
Thy cap, thy kirtle, and thy posies,
Soon break, soon wither, soon forgotten,
In folly ripe, in reason rotten.

Thy belt of straw and ivy buds,
Thy coral clasps and amber studs,
All these in me no means can move
To come to thee and be thy love.

But could youth last and love still breed,
Had joys no date nor age no need,
Then these delights my mind might move
To live with thee and be thy love.

 Marloweの詩は美しい自然の景色や小鳥, バラの花などを歌い込み, 牧歌的でロマンチックな印象を与えます. 「ふたりで岩の上に座り, 羊飼いが放牧するのを眺めよう」(6-7行目), 「浅い小川の流れ落ちるそばで鳥が美しくマドリガルを歌う」(7-8行目), そして君にバラのベッドやたくさんの花束を作ってあげよう, 花の帽子にギンバイカの葉を縫い込んだガウンも...と続きます(9-12行目). 季節は春から初夏の頃でしょうか.
 ところがロマンチストの羊飼いには, 手厳しい返事が返ってくるのです. Raleighの詩は次のように始まります.
 「もし世界と愛の形が(アダムとイヴの時代のように)純粋で, あなたの言葉がいつも真実を語るのなら」
 そして彼が語ったさまざまな美しい事物に対して, そのイメージを反転させていきます. 5-6行目で, 時が経てば羊たちは囲いの中へ入れられ, 川は暴れ, 岩は冷たい冬がやってくると, 7行目では"Philomel"が羊飼いの鳥のイメージに対するアンチテーゼとして登場します. ピロメーラーは悲劇の末に鳥へと変身させられたギリシャ神話の登場人物であり, 彼女が変身させられたと言われるナイチンゲールは, 冬の季節アフリカへ渡るためにその鳴き声をヨーロッパで聞くことができないのです. (後編へ続く)

-定期演奏会情報-
12/24(日) 第55回記念定期演奏会 @神戸文化ホール大ホール
詳しい情報・チケットのお申込みはこちら!

2017年6月14日水曜日

アポロン行事紹介! 〈フレッシュマン交歓会〉

こんにちは!
第一クォーターのテスト期間が終わったと思ったら、一回生の初ステージの兵庫県合唱祭も無事終了しました!時間がすぎるのが早くてびっくりです!
今回はそんな一回生が参加したフレッシュマン交歓会についてレポートしていきたいと思います!

フレッシュマン交歓会(通称フレ交)とは!
関西学生混声合唱連盟(関混連)を構成する六つの合唱団の新入生が初めて一堂に会するイベントです!
それぞれの団で歌を披露したりみんなでウォークラリーをすることで仲を深めあうことを目的としています。
他団の知り合いをつくることはもちろん、入ったばかりの新入生達が同じ団の人と仲良くなる機会でもあります!


フレ交に参加した一回生男声にインタビューしてみましたー♪
Qフレ交は楽しかった?
Aいろんな大学のひとたち、いろんな個性の人たちがいて、合唱初心者の僕にとっては刺激になりました
Q新しい友達はできましたか?
A友達はできました、けど女の子の友達はできませんでした(泣)
Qウォークラリーはどうだった?
Aめっちゃおもしろかったです!
特に人間知恵の輪的なやつが面白かったです!
知恵の輪だけでなく、みんなの緊張も解けました(どや顔)
Q一回生だけで歌ったけど感想は?
Aかなり緊張しました、でも他の大学の人に誉めらました!
Q最後に何か一言!
A
関西大学でやったんですけど、神戸大にはぜひともあの立地と外観を見習って欲しいです。

皆さんに彼のどや顔を見せられないのはとても残念です、一回生だけのステージを乗り越えて少し頼もしくなったかな?



一回生だけで商神!


キョンパスきれい!

楽しそうですね、僕も行きたかったです!
そんなフレッシュな一回生が出演するステージはこちら↓


・6/11(日) 兵庫県合唱祭 (いたみホール)
1回生(69期生)のデビューでした!ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

・7/2(日) Joint Concert 2017 -創世- (あましんアルカイックホール)
http://www.heimat-choir.net/2017joint.html (京大ハイマートさんの公式HP内特設ページに飛びます)

淀川混声合唱団さん、京都大学音楽研究会ハイマート合唱団さんとの合同コンサートです。合同曲は柴田南雄作曲のシアターピース『宇宙について』を伊東恵司先生の指揮でお送りします!

2017年5月25日木曜日

演奏会出演報告! <関混連定演>

こんにちは!
まだ5月だというのに暑い日が続いていますね。熱中症に注意です。
アポロンは去る5月21日(日)、関西学生混声合唱連盟第48回定期演奏会に出演しました。今回は(ちょっとユルめに)その振り返りをしていきます!


今回の関混連定演の会場は大阪・福島のザ・シンフォニーホール。午前に集合し、午前は単独ステージの、午後は合同ステージのリハーサルを行いました。


 6団体の合同演奏会ということで待ち時間が多く、昼休憩も90分ほどありました。昼休憩の過ごし方は様々です。弁当を買って楽屋で談笑しながら食べる人、ホール近くのお店に食べに行く人…。そんな中、ラーメン人生JETに行った団員(男声)にインタビューをしてみました。

筆者「なぜラーメン屋へ?」
団員「愚問だね。逆に、ラーメン屋に行かない理由があるなら教えてくれよ。」

筆者「何を食べましたか?」
団員「醤油チャーシュー」

筆者「お味はどうでした?」
団員「美味しかったよ。気になるならみんな行ってみると良い。」

筆者「合唱とラーメンについてひとこと!」
団員「麺とスープの織り成すハーモニーが分からないのなら、君はまだ合唱を本当に理解したとは言えないんじゃないかな?」

そんなラーメン人生JET福島本店についてはこちらから!
Twitter→https://twitter.com/jetjpn
食べログ→http://tabelog.com/osaka/A2701/A270108/27050827/


※全然書いていませんが、空き時間にはもちろん楽譜の確認などの準備もしていましたよ!


15:30、いよいよ開演です。

最初に「エール交換」をしました。エール交換では、6大学それぞれの団が自校の学歌を順に歌っていきます。アポロンは神戸大学の旧学歌、『商神』を歌いました。神戸大学の前身、神戸高等商業学校時代の明治38年頃に作詩・作曲された、とっても歴史のある曲です!学歌を聞き比べると、それぞれ違いがあって面白かったのではないでしょうか。

アポロンが単独ステージで演奏した3曲は、『ELEGIA』、『春のガラス』『ソルシコス的夜』でした。12月の定期演奏会では、この3曲を含む曲集『ア・カペラ混声合唱のための ELEGIA』(北園克衛 作詩、木下牧子 作曲)を、全曲演奏します。さらにレベルアップできるよう練習していきます!

合同ステージでは、混声合唱と2台ピアノのための『交聲詩 海』(宗左近 作詩、三善晃 作曲)を演奏しました。あの時、あの場所でしかできないような、とてもエネルギーに満ちた演奏がでました!取り組み始めた時は難しい曲だと思いましたが、この曲から、また藤井先生のご指導からたくさん学ばせていただきました。


さて、先日の関混連定演をざっと振り返って参りました。
たくさんの方にご来場いただき、とっても嬉しく思っています。また、お付き合いのある皆様からお菓子などの差し入れもいただき、休憩時間に美味しくいただきました!


ご来場くださいました皆様、ありがとうございました!


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♪アポロン出演情報(直近2ヶ月)♪

・6/11(日) 兵庫県合唱祭 (いたみホール)
1回生(69期生)のデビューです!

・7/2(日) Joint Concert 2017 -創世- (あましんアルカイックホール)
http://www.heimat-choir.net/2017joint.html (京大ハイマートさんの公式HP内特設ページに飛びます)
淀川混声合唱団さん、京都大学音楽研究会ハイマート合唱団さんとの合同コンサートです。合同曲は柴田南雄作曲のシアターピース『宇宙について』を伊東恵司先生の指揮でお送りします!

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